20歳と38度線

朝鮮半島に関心のある大学生の日常。

今日も私は、外国人の彼を愛しています。

バイト先でこんなことがあった。

 

夕方のピーク時。売場はごった返していた。

高級イメージ戦略バリバリの私のバイト先は、ただでさえ人気店で、混む時はもう、足の踏み場がないくらい混む。

 

売場は狭すぎて、テイクアウト専用の店舗でレジと商品棚しかない。レジにお客を並ばせるスペースもなくて、「買う商品がお決まりになりましたら、店員にお声がけください。だいたいの順番は、目で確認してますが、正確ではないので、不手際がございましてもご了承ください。」って感じの列がないシステムをとっている。

 

 

セールもやってたから今日はなおさら混んで、私たちはレジにへばりついて次から次へとくるお客さんを、丁寧なマニュアル通りに対応するだけで手いっぱいだった。

 


レジの前で突然、お客さんの1人が大声をあげた。

 

別の客が割り込んで来たのにムカついたらしかった。

 

叫んだお客さんのことは、レジ前の値引き商品であれでもないこれでもないと悩んでて、とりあえずスルーしてたので、近くにいた店員は全員、ギクッとなった。

 

 

けれど、怒ってるのは店側にではなく、割り込んできたお客さんに対してだった。


「あなた、日本人じゃないでしょ?」


ただそれを連呼してる。
だから余計に目立った。

 

 


偶然手を伸ばした値引き商品を、タッチの差で3つもかっさらってスムーズに店員を捕まえ、会計始めたのが気に入らなかったらしいのに、

 

 


「これください」がカタカナに聞こえたのを揚げ足をとって

 

 


ただただ「私、これだから外国人嫌いなのよね」「これだから外国人は」と繰り返していた。

 

 


会計中、すぐ横でブツブツ繰り返されてさすがに頭にきたのか、

「私が外国人だからって何?何よ?」

と会計が終わったら応戦してしまった。

 


言い合いでネイティブに勝てるわけもないので、

 


「ほらね〜〜ヤダもうこれだから」

「これだからって何?外国人で何が悪いの?」

の押し問答になった。

 


お互いに一歩も引かない。

 


おいおい、まじかよ。こんな忙しい時に……

 


とヒヤヒヤしつつ、とりあえず騒ぎを視界から消して目の前のレジを叩いていた。

 

 


途中から、その、日本人の方の旦那さんらしい男の人が割って入って

 

 


「会計終わったなら帰れよ!帰れ」

って一言吐いた途端、リピートボタンが

「帰れ!」に変わった。

 

 


「帰れ!」


「なんでわたしが…」


「帰れ!」


「だから……」


「帰れ!」


「はぁ?!」


「帰れ!」


「っく!」


「帰れ!」


「……」


「帰れ!」

 

 

韓国人だったら、それぞれの言語で気をなだめさせて双方お引き取り願おうかと思ったが、

 


残念ながら、そうではなかったし、こういうのにバイトが勝手に首突っ込んで、あと30分で終わる勤務時間をお客様に対する謝罪とチーフからの説教で長引かせたくはなかった。

 

 

騒ぎが大きくなってきたので、フロアマネージャーをチーフが呼んできた。やっとことが解決するかと思ったら、

 


フロアマネージャーは、ただ、苦い顔をして双方の言い分を聞くだけ。

 

 

 

「おたくも迷惑じゃない?こういう外国人」

 

『うんうん』

 

「私が外国人だからってなんなのよ!」

 

『うんうん』

 

 

 

 

 


思わずレジを打つ手も止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

お客様第一って………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 


最終的に、外国人のお客様が、フロアマネージャーに連れられて別の場所に移動させられ、外国人に「帰れ!」と叫んでいたお客は、そのままショッピングを続けることになった。

 

 

 

 

 


「ねぇ、あういうの、だから私外国人嫌いなのよ。ひどいわよね?」

 

 

 

 

同僚は、お客様第一で頷いた。

 

 

 

 

 

 

私は悔しかった。

 

 

 

 

 

 

そのお客様が、商品片手に颯爽とお帰りになられた後、いまいち状況を把握してない店員が、「何があったの?」と素直に聞いてきた。

 

 

 


私「がいこ……」

 

 


「なんかね、外国人が割り込んで、お客様が怒ったの」

 


と、派遣さんが言い、

 


「割り込みはいけないよね」

 

とすべてを見ていたはずの別の人が言い、

 


「これだから、中国人は気が強くてね〜〜」

 


と、また別の人が言った。

 

 

 

 


たぶん、世間は、こんな感じなんだと思う。

 

 

わたしが信じてる世界が、ただ逆なだけで、

 

 

 

私が暮らしている世界は、人種差別より、割り込みが悪い世界なんだと思う。

 

 

でも、あの人たちは、知っているんだろうか。

 



時に、アイデンティティのはずの「日本人」という言葉が、自分を侮辱する言葉になる日がくるのというのを。

 

 

 

 

憧れの国を訪れた時、「猿」と揶揄される日本人の気持ちや

 

 

愛する人の国で暮らし、その国の人に侮辱される日本人の気持ち、

 

 

外国人になった日本人の気持ちを、あの人たちは想像するんだろうか。

 

 

 

 

もし、自分の子供が、ハーフだからっていじめられる悔しさを、死ぬ思いで経験しなきゃならない未来しかこの国にないなら

 

 

 


私は母国をどう愛せばいいんだろう。

 

 

 

 

 

大好きな、自分の育った、この国を出ていけというなら、

 

 

 


私はどこに帰ればいいんだろう。

 

 

 

悔しさと涙でいっぱいのリュックを無理やり閉めて、30分後、私はバイト先を後にした。

 

 

 

私はどこに帰ればいい。

 

いつものように既定路線に乗って、

 

 

混血の子どもをつれて、地下に潜って、

 

 

その日をやり過ごしていけばいいのかい?