20歳と38度線

朝鮮半島に関心のある大学生の日常。

銃と軍人

38度線ピースツアー2日目の朝はとても早かった。

 

農業活動担当者は6時50分に宿舎の前集合だったので、

 

6時に起きて、初日なので一応メイクをし、

 

台所に行って朝ごはんのコーンフレークを食べた。

 

時差はないのに、東京よりかなり西にあるドチャンリでは

 

 

寝ぼけてご飯を食べているころにちょうど朝日が登ってきた。

 

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ノンファル(韓国語で農業活動の略)と称して私たちがやるのは、村の農家さんたちのお手伝いで、

 

 

 

 

もっと雑に言えば私たちが労働力として駆り出されるのである。

 

 

 

 

 

宿舎の前のあずまやで10分ほど待っていると、農家のおじさんたちが運転するトラックが次々にやって来た。

 

 

 

トラックから降りるなり小麦色の顔をしたおじさんが、

 

 

 

「なに化粧なんかしてんだ、ガハハ」と笑った。

 

 

予想はしていたが、面と向かって言われたので

 

化粧は2日目からはしないことにした。

 

 

 

 

ノンファルチームは大きく2つのグループに分かれ、

 

私たちのグループは2・2で別れてトラックに乗り、トマト畑を目指した。

 

 

 

宿舎からまっすぐ道なりに進むと、軍の検問所があった。

 

 

ここからは、民間人統制区域だ。 

 

 

軍事地域となり、民間人の出入りが制限される。

 

 

 

しかし、目指す畑は検問所より内側にあり、ここを通らなければならない。

 

 

私はてっきり軍の方にも話が通っていると思って、

 

 

おじさんと受付が話している間、目の前で行く手を阻んでいる軍人をじっくり観察していた。

 

 

彼は直立し、銃身の長い小銃を持っていた。

 

 

警官の腰と海外の空港以外で銃を見たことがない私は、

 

田舎道を背景に見る軍人の姿を上から下まで舐め回すように見た。

 

 

銃の中って実弾なのかな。

 

 

ヘルメット重そうだな。

 

 

靴も重そうだな。

 

 

ああやって一日中立っているのかな。

 

 

階級はやっぱり一番下なのかな。

 

 

あんまり私と年が変わらなそうだけど……

 

 

あまりにもジロジロみると変に思われるので適当に右を向くと、

 

 

びょっと、横の軍の宿舎から二人の兵士がじゃれあって出て来た。

 

 

あー交代制なのか。

 

なんか男子校みたいで楽しそうかも。

 

 

なんて思っていたとき、横でおじさんと受付係がもめていることに気づいた。

 

 

おじさんは

 

「畑を手伝ってくれるんだよ」

 

「日本人だから」

 

「毎年来てるじゃないか」

 

とかなんとか言い、検問をクリアしようとしてたが、

 

 

 

受付係は「話は聞いてませんよ」の一点張りで断られているらしかった。

 

 

 

今まで視界に入っていなかった受付係がイケメンであることも含めて

 

 

20年生きていきた中で大変な大事件で、

 

 

「化粧して来てよかった」と同時に

 

 

「いや、おじさんそれで突破しようとするのはむりじゃ……」と内心思いながら、

 

 

不安が頭をよぎりまくっていた。

 

 

ここで逃げたりしたら、あの銃で撃たれるのかな……

 

 

捕まって変に取り調べとかされたらどうしよう……

 

 

 

日本に強制送還されたら……

 

 

 

 

 

過ぎ行く妄想と事態を自分の力でどうすることもできない現実にただただ「おじさん頑張れ!」と心の中で叫ぶしかなかった。

 

 

 

 

後から聞いた話だが、村人は軍人とほぼ顔見知りなので検問は自由に行き来ができるらしい。

 

 

 

おそらくそのおじさんは自分がいるから大丈夫だろうと思ったのだろう。

 

 

 

農作業のため、パスポートも身分証も何も持って来てなかった私は、

 

 

 

書類にいろいろな個人情報を書かせられ、

 

 

 

やっと検問を通過することができた。

 

 

 

 

帰りは、ちゃんと私が区域から出たことを確認するために、名前と顔をチェックされた。

 

 

 

まぁ、2回目以降はイケメンのお陰で、怖い思いをしたことも忘れて、

 

 

 

 

検問所を通るのが少し楽しみになったのだけれど。

 

 

 

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