20歳と38度線

K-popと政治問題だけでは語れない朝鮮半島について書いています。

VRでK-popを見る時代がすぐそこまで来ているけれど

 昨日、EXOというグループのライブに行ってきた。兵役に2人メンバーを送り出し、6人でのツアーだったが、相変わらずスケールが大きく、カリスマ性の溢れたライブだった。

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コンサート当日の横浜アリーナ

 私の席は、アリーナを挟んで正面1階席8列目だったのでステージからはかなり距離があった。双眼鏡を覗き込まないと誰が誰なのか確認できないくらいの距離だ。私の推しであるEXOが世界的大スターなのでこれくらいなら運がいい方だ。東京ドームで1階席の一番後ろの席になったときは「ファンクラブ会員なのにここか……」と心の声が漏れたこともあった。

 もちろん、コンサートでは後ろの席の人も失望しないように演出として様々な仕掛けがある。後方にステージを作ったり、サインボールを遠くに飛ばしたりなどがそれだ。今回のコンサートでは、長い花道に加え、1階席すぐ手前の通路をメンバーがスクーターで滑走するという演出があった。望みの薄かった後方席のファンは嬉しい悲鳴で包まれた。しかし、肉眼で表情が確認できるほど近くに来たのはほんの一瞬で、本当に一瞬すぎて今振り返るとその記憶でさえ幻だったのではと思えてくる。 

 「欲を言っても仕方ない」と公演中は、一生懸命双眼鏡のピントを合わせていた。円形の花道をぐるぐる移動する彼らにピントを合わせるのに、初めは苦労したが、じきに慣れた。双眼鏡を覗き込みすぎて公演後は、少し遠くのものが見えづらくなった。視力を回復させようと、夜空を見ながら駅へと歩いている間、「せめてこの双眼鏡が、VRグラスならなー」と思っていた。

 VRが実用化されはじめてもう1年くらいたつだろうか。ゲームでは一般的になったもののまだライブ鑑賞の世界には進出していない。

 2ヶ月ほど前、VRグラスを買った。専門的なものではなく、スマートフォンをセットして見る簡易的なものだ。私は、Produce Xというアイドルサバイバルゲームのパフォーマンス映像を見ようとしてた。SKTという韓国の通信会社がアイドル番組とコラボして、まさに”新世代のK-popの楽しみ方”を提案しようとしていたのである。しかし、VRグラスを買ったはいいものの、よくよく説明を読んでみると映像を見るには5Gの通信網が必要とのことだった。「仕方ない」と日本には5Gがないので断念するしかなかった。

 安物ではあるが、せっかくVRグラスを買ったのだからとYouTubeでちょっと遊んでみた。最初はVR用の映像を検索して見ていたが、ひょっとしたらと思い、普通の音楽番組のパフォーマンス映像を見てみた。最近、YoutubeにもVR機能が追加されて、普通の映像でもVR仕様で見れるようになったのだ。予想は的中、推しが踊る様子を顔を覆うほどの大画面で見ているようで、テンションが上がった。

 しかし、一つ問題があった。画質である。スマートフォンVRグラスにセットして見る場合、画面を右目と左目用と二つに分ける。よって、映像の大きさは元の映像の4分の1にってしまう。画質もその分下がり、1080pで見ていても、鮮明さが感じられなかった。もっと綺麗に見たいと思って1320pに画質をあげると、今度は映像の容量が重くなり、家のWi-Fiではすぐ映像が止まってしまう。4GではVRを快適に見ることは出来ないのだ。だから5Gが必要だったのか、とそのとき初めて納得がいった。

 VRの画質を諦めると同時に、「もし、5Gが実現したら」と考えるといろんな未来が見えてきた。アイドル業界は特にVRとの親和性が高いのではないだろうか。VRが日常的に見られるようになれば、パフォーマンス映像をVRで見られるだけではなく、コンサートの形も変わるかもしれない。

 最前列にVR撮影カメラをセットして従来の公演を配信する。運営側は、VRカメラ用に数席準備するだけで、配信分をさらに儲けることができるし、利用者は最前列からの景色がを家でも見られるようになるのだ。

 もちろん、家だけなく、コンサート会場で見てもいいと思う。席がステージから遠い人の場合、VRで推しを近くで見ながら、その場の臨場感を感じることができるようになるというわけだ。

 いろんなアングルのカメラを用意して、見ている側が手元のスマートフォンでアングルを選択できるようにするのもいいだろう。1人のメンバーをずっと追っていたい人用には〇〇くんカメラをすっと見てる方が幸福度が高かったりする。

 また、地方に住んでる人は、VRライブの登場によって、移動費や宿泊費が浮くことも考えられる。他にも、独特の演出のためにVR専用のライブを開催する時がくるかもしれない。

 そして何より、普段のインターネットライブもVRですれば楽しいこと間違いなしだろう。K-popのアイドルたちはファンと交流するインターネット放送を定期的に行なっている。その映像が3Dになり、より近くでお顔を拝められるかと思うと、お得感しかない。無料のインターネットライブがVR化するのは有料ライブの次の次の次くらいだろうが、スマホVR映像を撮れるようになる日もそう遠くはないのだから、時間の問題だろうとも思う。

 韓国では5Gがすでに始まっている。私も、留学中に一度5Gの体験をしてみたのだが、快適この上なかった。イベントとなればあちこちで無料のVR体験が出来たし、ソウルの街を歩けば、VRカフェやVRゲームの看板を目にするのは1年前でさえ、別に珍しいことじゃなかった。

 K-popVR化はもうそこまで来ている、と同時に日本でそのサービスを享受するにはもう少し時間がかかるんだろうな、と私は思った。もし、来月からK-popVRのサービスが始まったとしても、それを見るには韓国に行き、5G通信の契約をしている友人に携帯を貸してもらう他ないのだろうなとも。

 双眼鏡で失われた視力を回復させている間に、私はそんなことを考えていた。ただ歩くだけでは暇なので、夜空を見るついでに星を探していたが、横浜の空に星は1つも見えなかった。街の明かりが雲に反射して明るいせいだろうか。