20歳と38度線

K-popと政治問題だけでは語れない朝鮮半島について書いています。

螺旋階段

 

 東京の年の暮れ。今年もとうとう終わりに近づき、世間的には、堂々巡りで何も前に進まなかった2020年が過ぎて行こうとしています。

 表向きは「コロナで大変でしたね。」と年末の挨拶を言う私ですが、実際は不謹慎にも非常に充実した一年を過ごしていました。

 

 1月は、大人になって初めて本気で小説を書きましたし、2月は人生初めてのヨーロッパ旅行に行ってきました。3月はホテルバイトリストラのため妹のバイト先に転がり込み、4月はフルオンラインの新入社員研修で、仕事がこんなに楽なのかと驚きました。5月はITとの出会いで私の隠れた才能が開花し、6月には人生初(多分人生最後)のSNS開発を1人でやり遂げてしまいます。7月は第1希望の部署に配属され、順風満帆のOLライフをスタートし、8月は映画ドラマ読書三昧の日々を過ごしました。9月はインテリアに懲り始め、10月には押しかけインテリアコンサルごっこをして遊びました。11月は自炊での鍛錬の成果が出始め、ついに韓国フライドチキンをマスターしてしまいます。そして今月12月は死ぬまでにやりたいことリストの中の一つ、K-pop翻訳をYouTubeで始めました。


 大学まで必死に働いていた分、就職後は時間に余裕ができ、インプットする時間が増えました。大学の課題で吐き出すことだけを覚え、アイディアの泉は枯渇していましたが、今年は心臓から指先の細胞に向かって自分の内側が着実に満たされていくのを感じました。また、新しく始めた仕事は運良く自分の性に合っていて、お金と時間の余裕から来る精神的安定を人生で初めて手に入れました。今年の正月に今生の別れと知らずに離れ離れになった軍人とは、除隊とビザ発行問題を経て、無事師走の候に再会しています。


 今、こうして振り返ってみると、2020年は知らぬ間に自分の原点に戻ってきていた年だったように思います。読書、映画、ドラマと目まぐるしい日々を過ごし、小学生以来書かなかった小説を再び書きはじめ、錆びていたギターの弦を張り替えて、最近また弾くようになりました。

 もちろん、歌を歌う言語と好きな映画の話ができる友人が増えたこと、新しいことを一緒に挑戦してくれる相棒が隣にいることは同じではありませんが、今目の前に広がる風景を見ていると、好きなことをただ好きという理由だけでやっていた頃の感覚が蘇ってくるのです。


 気づけば、私の人生の目盛りも時間の分だけ進んでいて、来年四半世紀目を指そうとしています。見下ろせば過去の自分が、見上れば新しい時代が、見えてくるような人生25年目。今まで離れようとしても離れなかったものを中心に置いて、これからも続く螺旋階段を私は少しずつ登っていくのでしょう。そして、これからまた遠くを目指して歩き出し、しばらくして同じ風景を見に帰ってくるのでしょう。

 今年はちょうど2020。ここからはじめる歩みを、また1から数えてみようと思います。


皆さん、良いお年を!