20歳と38度線

K-popと政治問題だけでは語れない朝鮮半島について書いています。

【インド映画『RRR』感想】あるある、あるよねー。

 小説を書き上げていたときに友人たちのインスタでめちゃくちゃ流行っていたインド映画があった。題は『RRR』。タイトルだけでは中身がわからず、予告編を見たら、普段はあまり見ないインドのエンターテイメント作品だった。とりあえず名前だけ覚えておいてまた原稿に向かったけれど、しばらくして、妹が2回(しかも2回目はIMAXで)見たとストーリーに上げていた。あの妹が?と驚き、どれほどのものかと興味が湧いた。

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 が、1年越しに終わりが見えてきた小説をほっぽり出すわけにはいかなかった。終わる終わる詐欺をしてもう半年が過ぎていた。いけないいけない、同じ過ちを繰り返すところだったと、浮かしたお尻にぎゅっと力を入れて、姿勢矯正用の椅子に擦り付けた。

 のが、数週間前の話。先週の頭に今年の目標の一つだった小説をやっとこさ終わらせて、滑り込みで映画を見てきた。ずいぶん流行りに遅れて、もう大きい映画館でも早朝か終電で帰る時間でしかやってなかった。

 映画は世間で言われている評判そのままで、びっくりするくらい面白かった。マーベルファンでもある夫は、

「インド映画の時代が来るぞ!!!」

と興奮冷めやらぬ様子で、私も思わず見終わった後は劇場で拍手をしてしまったくらいだ。無意識に手を叩いたのは2020年にアカデミー賞を受賞した『パラサイト』以来だった。劇中10回くらいニヤニヤして、ラーマの秘められた過去のシーンではちゃっかり泣いた。

 映画館を出た後に、二人でラーメンを食べながら感想を言い合ったが、独立運動家たちが神々しい姿で次々に登場したエンドロールについて話さないわけにはいかなかった。私の勉強不足でガンジー以外存じ上げなかったけれど、過剰な演出のおかげで偉人であることは容易に分かった。その演出のしつこさは、直前まで楽しさで気が狂っていた観客に"あ、この映画ってプロパガンダ映画/教育映画でもあったんだ"と気づかせるほどのインパクトを持っていた

 インドが大英帝国の植民地であったことは周知の事実だろう。映画の中で英国人の警官たちは人形なのかと思うくらい
バッタバッタと倒されていった。私はその様子にとても既視感があった。韓国の植民地期を描いたアクション映画・ドラマでよく見た構図だったからだ。『ミスターサンシャイン』とか『グット・バット・ウィアード』の戦闘シーンで、日本兵がポンポン死んでゆく、あれだ。

「ですよねー。」

支配層とは思えないほど弱々な敵陣のおかげで、主人公たちのパワフルさが引き立つのはお約束っちゃお約束。こういう"植民地VS宗主国の公式"みたいな映画の型があるのかもなーと考えたりした。


 世界中で大ヒットした本作品だが、イギリスではどうなのかと気になってググったら、ちゃんと大ヒットしていた(そうだ)。ネットサーフィンで見つけたBBCの記事はちょっと深読みするべき?というくらい良いことしか書いてなかった。

 加えて、歴史などを簡単にまとめた文春オンラインの記事を読みながら、私はそうだったと膝を打った。今のイギリス首相はインド系なのだ。彼の首相就任のニュースが出た時、

「もし日本だったら、孫正義が首相になるかんじ?」

と夫と2人で話していた。確かに、そんな国だったらちゃんと『RRR』もヒットしそうだなと納得した。


 そういえば、今日は3.1節で韓国では独立運動を祝う日。1920年インド半島が舞台の映画では、主人公たちは超高速ステップの派手なダンスで宗主国の人々に対抗していた。一方で1919年に朝鮮半島に生きた人たちはシンプルに両腕を上げていたんだよな。偶然並んだフィクションと史実が頭の中で混ざり合い、つられて手足を動かそうになったけれど、足をばたつかせて中途半端に手を上げる自分の姿が滑稽なのは分かっていたので、机から10センチ腕を浮かせたところでグッと制止した。