3月10日からの約一か月間、同ブログやSNSで嫌韓発言に対する韓流ファンの意識調査の目的でアンケートを行いました。私が過去、韓国コンテンツが好きという理由で韓国文化や韓国人への差別発言を浴びせられた経験があり、あることをきっかけに「どれくらいの人たちが同じ経験をしているんだろう?」と知りたくなりました。アンケートを実施するまでの詳細な経緯は、記事「KPOPファンのいきづらと差別はつながっている」に記載しているので、お時間があるときにぜひ読んでみて下さい。
たくさんの方にアンケートにご協力いただきましたが、総回答数が1クラス分ほどなので、この結果から韓流ファン全体に対してどうだと言うことはできないかもしれません。ですが、数字として結果を確認することで、仮説を立てたり自分の考えを整理する材料としては使えるかと思います。ぜひ活用してみてください。
はじめに
アンケートには、1か月で10~60代までの34名もの方が回答してくれました。無名のブロガーのアンケートにこれだけの方が協力してくださったこと自体に、感謝の言葉しかありません。ご協力いただいた皆さん、本当にありがとうございました。
また、アンケートの中で回答者の性別、年齢層、親しんでいる韓国コンテンツにつてもお答えいただきました。調査内容として重要かと思いますので、回答者のこれらの属性について先に述べておきます。男女比は女性が77%(以下、数字は全て小数点以下四捨五入)、男性24%でした。年齢層は、20代が77%と一番高く、次いで30代が12%、残りが40代以上となります。親しんでいる韓国コンテンツとしては、K-popを含む音楽が最も多く、次いでドラマ、Youtubeを含むネット動画コンテンツ、映画という順番でした。
韓国に関する否定的な言葉をかけられたことがある人の割合
まずはじめに、嫌韓・差別発言を念頭に「あなたは韓国コンテンツに親しんでいるのがきっかけで、他の人から韓国の文化や韓国人に対する否定的な言葉をかけられたことがありますか?(ネット上も含む)」という質問を行いました。56%の人たちが「一回以上ある」と回答しました。また、「5回以上ある」と回答した人は20%でした。
どのようなことを言われたのか
上記の質問に「一回以上ある」と回答した人に対して、具体的にどのようなことを言われたのか聞きました。「韓国が嫌い」という類の一方的に韓国を拒否する発言が一番多かったですが、中には衝撃的なものもありました。皆さんの参考になればと思い、回答の一部を抜粋してそのまま掲載します。ヘイト発言が多数ありますので、苦手な方は読み飛ばしてください。
K-pop好きなお前が嫌いと言われました
また韓国か!もうやめろ!韓国人はつけこんでくる、など
あんな国のどこがいいの という言葉をかけられた
韓国のものなんかより日本のものの方がいい
韓国行くと日本人は嫌なことされるんでしょ?
韓国って国嫌いだからどうでもいい
同僚数人と好きな映画の話題になり、韓国の映画好きなんだよねと何の気なしに言ったところ男性複数から「あ俺韓国嫌いなんで」と即座に否定され、詳細は忘れたが「ウンコ食う国ですしね」などネットデマレベルの誹謗中傷を聞かされた
母親が嫌韓です。テレビでKPOPアーティストとか韓国のニュースを見ていると、「そんなもん見るな」とか「韓国人は嘘つきで信用できない」と言ってきます。
昔付き合ってた人から、話の流れで「まさか実は韓国人ってことはないよね?」と訝しげに確認されたことがあります。
正直、この質問の回答を眺めているだけで吐き気がしてくるのですが、一覧にしたおかげで韓流ファンがさらされているヘイトの深刻さが実感できました。
誰が言うのか
最初の質問に「一回以上ある」と回答した人を対象に、その発言を誰に言われたのかを聞きました。回答として最も多いのは「家族・親戚」、次いで「友人」となりました。
また、前述した回答2つに「パートナ(配偶者、恋人含む)」を含めると全体の68%のとなり、韓流ファンが韓国に対し嫌悪・差別発言を行う人と日常的に接していかなければならない現状が見えてきました。
韓流ファンの取った行動
最初の質問に「一回以上ある」と回答した人を対象に、その発言を聞いたとき自分がどういう行動をとったか聞きました。その結果、53%の人が「相手の言葉を無視した」、37%の人が「相手の言葉に反論した」、10%の人が「本心ではないが相手の言葉に同意した」と回答しました。
上記3つに加えて、「発言に共感して相手の言葉に同意した」を回答の選択肢として準備していましたが、選択した人はいませんでした。
なお、同質問は自由記述の選択肢を追加できる設定にしていました。グラフが見やすくなるよう、自由記述の回答は最も近い既存の選択肢と置き換えて集計しました。
韓流ファンの嫌韓発言に対する考え
次に、韓流ファンの嫌韓発言に関する考え方について質問しました。選択肢としては以下の4つを提示しました。
- 問題とは思わない
- 発言そのものは問題ではないが、韓国人や韓国にルーツのある人の前では言うべきではない
- 発言そのものは問題ではないが、韓流ファンの前では言うべきではない
- 人前で言うべきではない
結果は、「人前で言うべきではない」と答えた人が最も多く67%に上りました。また、「発言そのものは問題ではないが、韓流ファンの前では言うべきではない」を選択した人が一人もいなかったことは意外でした。
個人的に、今まで何回も韓国に対する差別発言に遭遇してきたので「差別発言が野放しにされている=黙認している人が多い=発言自体は問題視していない人が多いのでは?」と予想していました。「人前で言うべきではない」と回答した割合がこれほど高い結果が出たことはうれしい裏切りでもありました。
ただ、他の質問もそうですが特にこの質問の結果は回答者が本ブログの読者が中心であることが影響していると考えられるかと思います。K-popライブ会場や韓国語教室などで同じ問いを聞いたときにどのような答えが返ってくるのか気になるところです。
「嫌韓発言」と「差別発言」に差はあるのか
私は「嫌韓発言=差別発言」と考えていますが、二つが使い分けされている以上、異なるものとして認識されているのも事実だと思います。そこで、韓流ファンの「嫌韓発言」と「差別発言」の認識の差異について確認したいと考えました。
確認方法として、それぞれの言葉の定義を回答者に委ねた上で「 以下の発言の中で嫌韓/差別発言と思うものを全て選んでください」と質問しました。
なお、「韓国の文化や韓国人に差別的であったり、過度にネガティブなステレオタイプを助長している発言」を嫌韓発言および差別発言であると定義した上で、選択肢の文言作成を行いました。
- 韓国アイドルは全部同じ顔
- K-POPは韓国の音楽だから嫌い
- 韓国人は日本から出ていけ
まず、「嫌韓発言」と「差別発言」で単語を入れ替えただけの質問で、回答内容が変わった人は34人中5人にとどまりました。この結果から、二つの発言を同一と認識している人の割合が85%になり、とても高いことが分かりました。
また、想定通り、ステレオタイプを助長するが、分かりやすい憎悪感情の表現がない「韓国アイドルは全部同じ顔」という選択肢は、他の選択肢に比べ、差別・嫌韓発言と認識されない傾向にあることが分かりました。
アンケート結果まとめ
アンケートの結果は以上となります。これまでの分析結果をまとめると、アンケート回答者の半数以上の人が、韓国文化や韓国人に否定的な言葉を投げかけられており、その7割近くが家族や恋人、友人などの近しい、日常的に触れ合う人々からの発言であることが確認できました。
この結果自体はとても深刻ですが、嫌韓・差別発言に遭遇した時に相手に同意せずに無視・反論した人の割合が高かったことは、希望が持てるかと思います。
また、回答者の70%近くが嫌韓発言と差別発言を同一だと見なしている反面、嫌悪要素が弱いかつ偏見やステレオタイプを助長するだけの発言は差別・嫌韓発言ではないと認識される傾向があることが結果から読み取れました。
私たちも差別の被害者になることがある
もちろん、このアンケート結果だけを見て、韓流ファン全体について語ることはできないことは冒頭にも記載しました。ですが、個人的には、肌感覚で理解していたことが数字として見えたことで、自分の体験を客観的に整理できたと感じています。
また、アンケート回答者の半数以上が差別発言を浴びせられた経験があることから、一個人的な経験として通り過ぎていた不快感が、実は一定の人たちが経験する差別体験である可能性が出てきました。韓国・朝鮮人への差別が行われている日本社会の歪みが、私たちが差別の被害者となる形で表出しているのです。
私は研究者ではないので今のところ、これ以上の調査の予定はありませんが、このアンケートが皆さんの朝鮮人・韓国人差別に対して少しでも考えるきっかけになれば幸いです。