20歳と38度線

K-popと政治問題だけでは語れない朝鮮半島について書いています。

K-popオタクが最近の日韓関係について考えること

 私は現在歴5年のK-popオタク、略してKぽオタである。宇宙級アイドルグループEXOからK-popの世界に足を踏み入れ、防弾少年団時代のBTSを見守り、20代になってからSEVENTEENを推し始めた。彼氏ができたら少しは冷めるかと思いきや、彼氏の陸軍入隊と同時にオタ熱がぶり返し、最近はまた新しいアイドルを発掘する日々を送っている。

 Kぽオタだとまわりに公言していると、時々日韓関係について意見を求めてくる人がいる。そして、ごくたまに日韓関係の悪化を私の代わりに心配してくれる人がいる。しかし、私は毎回返しに困ってしまう。彼らの言葉の端々にKぽオタに対する偏見を感じ、かつ私の答えが彼らが期待している答えではないというもどかしさにイライラするからだ。

 当然ながら、Kぽオタの多くは日韓関係について興味はない。自分のオタ活に支障がなければ日韓関係が悪化しようしまいと全く関係ないのだ。日本のテイラー・スイフトのファンが日米関係について詳しいわけではないように、日本のK-popオタクも韓国政治に関する知識はほぼゼロだと言っていい。

 私は「もっと推したちのことを知りたい」という底なしの好奇心によって韓国社会について一通り学びはしたが、基本的なスタンスはよくいるKぽオタと一緒である。徴用工問題よりも最近推しが働きすぎなのが気になるし、韓国のホワイト国除外よりも推しが音楽ランキング1位候補圏外なのが悲しい。韓国政府のGSOMIA破棄は正直どうでもよく、推しの事務所との契約破棄こそが、私の人生を揺るがす一大事なのである。

 悲しいが、私の5年という短くないKぽ人生の中で、日韓関係が良いと言われたことは一度もなかった。ニュースで日韓関係は常に”最悪”と言われ、毎年その”最悪”を更新し続けた。しかし、そんな中でも、私のオタク生活は常に最高であった。日本にいながら毎日ネットで推しの動画が見れ、日本にいながら推しのCDをボタン1つで買える。東京ドームの2days公演に参戦でき、2時間半という速さで国内旅行より安くソウルに行けるのである。

 ソウルで過ごす日々は、それはもう楽しさでしかない。推しの広告を街中で見るたびにテンションが上がり、地下鉄の駅で推しの誕生日広告を見るとファンとしてとても誇らしくなった。テレビをつけると課金なしで推しが出ている番組が見れることに感動し、聞き取れないドラマを一生懸命見たりした。年々上がる韓国語の実力のおかげで、楽しさは毎年”過去最高”を更新してきたのだ。

 しかし、あれだけ無関係だった日韓関係悪化が最近私のオタ活に陰を差し始めた。

 一番のきっかけは、日本人旅行客を韓国人男性が暴行したという事件だったと思う。事件以前は、テレビに出ているコメンテーターたちの批判はまだ韓国政府で止まっていた。しかし、あの事件をきっかけに日本のメディアの中で韓国人に対する差別発言が黙認されるようになったのだ。事件とほぼ同じタイミングで起こった韓国での日本人男性の性犯罪は一切取り上げられず、何回も日本人女性が韓国人男性に手荒く扱われる映像が地上波のテレビで流れた。視聴者の恐怖心を煽り、日本人女性暴行事件の本質が女性差別であるにもかかわらず、日本のワイドショーではあたかも反日感情が原因であるかのように報道した。一度、外れてしまった嫌韓へのブレーキはなかなかもとには戻らないようで、今も日本のメディアは、似たような疑惑のある日本の政治家にはノータッチなのに日本国民には一切関係のない韓国の政治家のスキャンダルを一生懸命に特集している。有名人による韓国人へのあからさまな差別発言は、テレビの中で笑ってごまかされるだけになってしまった。

 そして先日、ついに私が恐れている事態が起きた。例年ソウル、香港、日本の3拠点行われてきたK-popの祭典&授賞式MAMAが、デモと日韓関係の悪化を受けて香港と日本での開催を保留しているというのだ。安全面と韓国国内の世論を意識してというのが一番の理由だそうだが、保留決定から1ヶ月半が経ち、開催が3ヶ月後に迫った今でも開催地が決定していないのは日韓関係が一切回復の兆しを見せないことも影響しているだろう。毎年行っている年末の一大イベントに行けない可能性がとても高くなり、今年はどういうやって年を越せば良いのかよく分からなくなった。昨年はBTS、IZ*ONE、TWICEなど錚錚たる顔ぶれが日本で観れただけに、開催が保留された失望も大きい。

 このまま日韓関係悪化や日本の嫌韓の雰囲気が高まっていくと、推しの日本での活動が減っていく可能性が十分に考えられる。活動自体が減らなくても日本に行くことに推しがためらいを感じたり、せっかく日本に推しが来てくれたのに日本を覆う嫌韓の雰囲気のせいで、推しが日本で差別を受け、日本を嫌いになるかもしれない。馬鹿げた嫌韓報道のせいで嫌韓おじさんたちが活気付き、私たちと推しが会う機会が奪われてしまうことだけはどうしても避けなければならない。私は最近、本当に危機感を覚えている。

 じゃあ、どうすればいいのか。

 積極的な方法はいくらでもある。嫌韓報道をしているテレビ局に差別発言は撤回してもらうように電話を入れたり、K-popファンであろうとなかろうと友人が韓国人に対する差別的な発言をした時に「それ、差別だよ」と言ってあげたりする。韓国旅行に行ったり、SNSで自分が韓国で優しくされた経験を発信したりする。 

 そこまで勇気が出ない人ができる方法として、実は「選挙に行く」というのがある。選挙に行くことは一番簡単で効果的な方法だ。住民票を現住所に移していれば、自分の家に自動的に選挙のお知らせが届くし、期日前投票を利用すれば期間内にいつでも自分の好きな時に投票することができる。

 ただしその時に一番重要なのは、日韓関係を良くする政党に投票するということだ。与党自民党は最近日韓関係を急激に悪化させているし、日本維新の会は韓国に対する差別的発言を繰り返す議員が多い政党である。それらに投票してしまうと日韓関係悪化に賛成することになってしまう。逆に、立憲民主党共産党は対韓国外交を悪化させる自民党を批判している。立憲民主党共産党に投票すれば日韓関係を改善に向かわせることに賛成していることになるのだ。

 選挙は多い方に入れた方が勝ちというゲームではない。「私はこれがいい」と意思表示をする方法である。もちろん政党が掲げている政策は日韓外交だけではないが、自分が一番重要だと思う問題にポイントを絞って政党を選ぶのも正しい選択の仕方である。大切なのは投票をすること、とにかく投票することだ。

 あなたがKぽオタであるならば、自分たちの一票の重さをよくわかっているはずだ。ささやかながら毎日1人で、もしくは友達に頼んで何票か投票したおかげで好きなグループが1位になったり、推しがデビューしたりする。一人一人の「この人が好き」という一票が集まればどれだけの力になるのか、私たちはいつも見てきたはずだ。

  私は、これからもKぽオタクでありつづける。いくら日韓関係が悪くなろうと、私は推しに会いにソウルに行くし、韓国でたくさんの愛をもらって帰ってくる。韓国で出会ったいい人をたくさん知っているから、悪い人が少しいたとしても韓国に行くその足を止めようとはしない。そして、推しと私のつながりを断ち切ろうとする政治家にはきちんと選挙で「NO」を伝えていく。

 

 「この時期、韓国に行くの怖くない?」と人は言う。

 

私は、韓国に行けなくなるのが、一番怖い。